耳鳴りについて
【耳鳴りの起源】
耳鳴りは世界の人口の約15~20%の人が感じていると考えられます。65歳以上では聴力の低下とともに耳鳴りが増え、65歳以上の30%以上は耳鳴りの症状で苦痛を感じているといわれています。
近年、耳鳴りは耳自体よりも、音を感じる中枢の方にその起源があるのではないかと考えられる様になってきています。
耳鳴りの多くの方は難聴を伴っています。難聴を感じておられない方でも日常会話と離れた周波数における聴力の異常が発生している可能性も指摘されています。
耳から入る音の信号が脳に伝わり音として感じられるのですが、その入力信号が小さくなる(難聴になる)と、音を感じる中枢が、何とか弱い音信号を拾おうとして、過敏性を増す(興奮する)ことがわかっています。そして、その事が耳鳴りを引き起こす原因と考えられるようになっています。
これらのことから、耳から得られる入力信号を増幅すること、すなわち、難聴の治療や、治療できない場合は補聴器を利用することが難聴の治療に有効であることが分かっています。
また、耳鳴りに対する不安感や抑うつなどメンタルな部分が、耳鳴りをひどくする要因であることも分かっています。
【耳鳴の診療】
- 問診:耳鳴の音色はどうか、どの様な時になるのか等を伺います
- 診察:原因になっているお耳の病気がないかを確認します。
- 検査:耳鳴の音色や大きさを客観的に判断し、聴力との関係はどうなのかを確認します。ピッチマッチテスト、聴力検査等を行います。
- 治療:お薬による治療、補聴器を利用した治療、特殊な器具を使用した治療、メンタルな部分の治療等があります。
問診:まず耳鳴りでどの様なことがお困りなのか(眠れない、集中できない等)を確認します。
診察:原因になっている病気がないかを確認します。
検査:主観的な症状である耳鳴りを、なるべく客観的なデータとして確認します。また、聴こえの検査は必ず実施します。難聴の自覚がない場合でも聴こえづらい音が隠れている場合もあるからです。治療可能な難聴があり、それが原因で耳鳴りが発生しているのであれば、お耳の治療で耳鳴りが消せる可能性があります。
治療:治療可能なお耳の病気(メニエル病、突発性難聴、中耳炎、、音響外傷、耳垢等)があれば、その治療を行い、耳鳴りの改善があるかを確認します。治療で改善できない難聴が原因になっている場合があります。その場合は、お薬や補聴器を利用した治療を行う事になります。難聴もなく明らかな原因が不明な「無難聴性耳鳴」に対しては、検査で検出できない周波数に聴力障害が発生している可能性を考えて、生活、お仕事への影響等を考慮し、音響療法やお薬での治療を行います。
【補聴器による耳鳴り治療】
最初に【耳鳴りの起源】の所でご説明しました様に、中枢に届く音情報の不足した状態が続くと中枢が興奮し、これが耳鳴りを引き起こします。音情報をしっかり中枢に届けるという原理から補聴器の利用は理にかなった治療と言えます。
【音響療法】
環境音が極端に少ない静寂とも言える環境では、普段耳鳴りを感じていない健康な方でも耳鳴りを感じます。耳鳴りが気になる方は、環不快に感じない程度の環境音をあえて作り出すことも有効です。「川のせせらぎの音」、「波の音」等が良いと思います。耳鳴りで寝付けない方は、お休みになる時だけ聞いて見てはいかがでしょうか。
サウンドジェネレーターという器具を使用する場合もあります。
【お薬による治療】
原因疾患が明確な場合はその疾患に対する治療薬を服用します。
耳鳴りに対する治療薬はあまり多くはありません。確実な効果も保証できるわけではありません。服用して効果があるかどうかを判断することになります。
*サプリメントとしてイチョウ葉エキス、ミミズ、蜂の子等が利用されていますが、明確で科学的な裏付けはない様です。
【TRT療法】
耳に微細な音を継続的に入れ続けることで耳鳴りに対する慣れを獲得する治療方法です。再訓練法とも言われています。
【心理療法】
耳鳴りに対して強い敵愾心(てきがいしん)や恐怖心を持たれている場合は、耳鳴りの存在を強く意識してしまう結果になり、より辛く感じられると思います。この様な場合、耳鳴りの治療が長期にわたる可能性が高い場合はなおさら辛い状況になると思います。その様な場合は専門の心療内科、精神科の先生にもお願いして治療を進めてゆく場合もあります。
【補聴器のお貸出し】
補聴器に関しては、それぞれの患者さんの聞こえに最適なものを準備して試しに使っていただくことを実施しています。一般的には2週間程度ですが場合によってはさらに延長してお貸ししています。身をもって聞こえの改善、耳鳴りの改善を体験して見てはいかがでしょうか。