感染性胃腸炎(嘔吐下痢症)
1 感染性胃腸炎とは
感染性胃腸炎とは、細菌やウイルスなどの病原体による感染症です。ウイルス感染による胃腸炎が多く、毎年秋から冬にかけて流行します。 ウイルス性胃腸炎は「おなかのかぜ」「はきくだし」「嘔吐下痢症」など、様々な呼び方で呼ばれていますが同じ病気です。
2 原因と感染経路
原因となる病原体には、ノロウイルス、ロタウイルス、腸管アデノウイルスなどのウイルスのほか、細菌や寄生虫もあります。
感染経路は、病原体が付着した手で口に触れることによる感染(接触感染)、汚染された食品 を食べることによる感染(経口感染)があります。病原体により異なりますが、潜伏期間は1~3日程度です。
感染者の嘔吐物や便を触った手から感染します。また、乾燥した吐物が空中を飛散したものを吸い込み感染する場合もあります。
食品からの感染で多いのは貝類多いようです(下表参照)。
病原体 |
代表的な原因食品 |
潜伏期間 |
ノロウィルス | カキなどの貝類 |
1~2日 |
ロタウィルス | 飲料水、食物 |
1~3日 |
腸炎ビブリオ | 刺身やすしなどの生魚 |
10~24時間 |
サルモネラ | 卵および卵製品、洋菓子類、加熱不十分な食肉 |
5~72時間 |
病原大腸菌 | 弁当や給食等があるが、多は原因不明 |
12~72時間 |
カンピロバクター | 鶏肉、牛生レバー、殺菌不十分な井戸水 |
2~5日 |
3 症状
症状は、突然の嘔吐で始まり、約1日位はムカムカが続きます。嘔吐には、2通りのパターンがあって、半日くらいの間に何回も嘔吐を繰り返すことが多いのですが、1日1~2回くらいの嘔吐が2~3日続くこともあります。嘔吐に続いて下痢が見られることが多く、3、4日~1週間位続きます。赤ちゃんでは、下痢が長びくこともあります。
ノロウイルスによる胃腸炎では、主な症状は吐き気、おう吐、下痢、発熱、腹痛であり、小児ではおう吐、成人では下痢が多いです。症状の続く期間は平均24~48時間です。ロタウイルスの場合酸っぱい臭いのクリーム色~白色をした下痢が見られ、だんだん水のような下痢になります。発熱はあまり見られませんが、時に高熱を伴うこともあります。
ロタウイルス |
ノロウイルス |
|
潜伏期間 | 1~3日間 | 1~2日間 |
流行時期 | 冬~春 | 秋~冬 |
罹患年令層 | 乳幼児 | 全年令層 |
嘔吐 | + | + |
下痢 | ++長引く、白っぽい | + |
発熱 | + | -~+ |
脱水症状 | 強い | +~++ |
4 ノロの検査は
ノロの検査は、感染していても陽性とならない場合があり、陰性であっても完全に感染を否定できません。また、嘔吐や下痢の原因がノロウイルスでも、アデノウイルスでも、ロタウイルスでも、特効薬はなく、原因ウイルス専用の治療方法があるわけでもないので、あまり必要な検査とは言えません。
5 治療
特別な治療法は無く、症状に応じた対症療法が行われます。
嘔吐した場合は、1~2時間は飲んだり食べたりせずに、胃腸を休め、寝かせてあげると良いでしょう。お子さんが水分を欲しがっても短時間の「がまん」をしてもらうことが大切です。1~2時間後、水分摂取を始めましょう。この時、一気に飲むのではなく、経口補液水OS-1などを少量ずつ飲む、「少量頻回」の方法で水分を摂ります。
「少量頻回」の方法で行っていても嘔吐する場合は、吐き気止めの坐薬(ドンペリドン、ナウゼリン等)の使用を考えます。座薬を入れてから30分から1時間は飲ませずに様子を見て、嘔吐が収まっていれば、再度「少量頻回」を行ってみます。
*授乳、ミルク
授乳する場合は、嘔吐直後はお1~2時間控えてください。母乳自体は胃腸には良いのですが、1回の量を少なめに短時間で切り上げてください。嘔吐がなければ少量をこまめに与えてみてください。
ミルクは濃さはいつも通りで、1回のミルク量は少なめにしてみてください。
6 予防のポイント
ロタウイルスによる感染症については、予防接種ワクチンがあり、乳幼児を中心に接種を受けることが行われています(任意接種です)。かかりつけ小児科医と相談してみてください。ノロウイルスについては、予防接種はありません。
トイレの後や、調理・食事の前には、石けんと流水で十分に手を洗いましょう。
便やおう吐物を処理する時は、使い捨て手袋、マスク、エプロンを着用し、処理後は石けんと流水で十分に手を洗いましょう。素手での処理は絶対避けてください。ビニール 袋に手を入れて手袋がわりにしてみてください。吐瀉した床も消毒薬で拭きあげて、拭いた雑巾は廃棄してください。