佐賀県佐賀市のいちはら耳鼻咽喉科クリニックです。 新生児からご高齢の方まで、全ての年齢の患者様を対象にしています。1.的確な診断と治療 2.十分な説明 3.受診しやすい環境 4.子どもを怖がらせない を理念として診療にあたっています。アレルギー性鼻炎のレーザー治療、睡眠時無呼吸症候群の治療にも力を入れています。

妊婦さん、授乳婦さんの花粉症対策

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妊娠中、授乳期間中に花粉症シーズンに突入してしまうことはとても辛いと思います。しかしそこまで計画的に妊娠するなってとても無理だと思います。くしゃみに伴ってお腹が張る、鼻水をかみ続ける続けると余計お腹があるし、薬を飲むと胎児への影響や母乳への移行が心配になる。シーズンに向けてどう備えたらいいのか、何とかならないのか。安全に使える薬はないのか? 漢方薬なら安全なのか? 耳鼻科医として考えてみたいと思います。

スギ花粉症を持っている、妊婦さん、授乳婦さんのはどのくらいいるのか?

年齢別の花粉症を含むアレルギー性鼻炎の有病率を示したグラフです。緑色のグラフがスギ花粉症の有病率です。妊娠、授乳の中心的年齢の方の半数近くが、程度は別としてスギ花粉症に罹患していることが伺えます。

妊娠中、授乳中にスギ花粉症が出たらどうなるのか?

妊娠中であっても花粉症を免れるのは困難です、その症状も、非妊娠時と何ら変わらないと考えて下さい。妊娠中は胎児を異物とみなさないように「免疫寛容」が働きアレルギーは起こりにくくなる、と説明される事もあると思います。日本産婦人科学会のHPに「本来は,免疫学的に拒絶される胎児が拒絶されないのは,妊娠時に免疫学的寛容(トレランス)が存在するからである。」と書かれています。しかし、スギ花粉症はI型アレルギーで多量にアレルゲンが体内、特に鼻腔内に入り込んでしまえば、症状から免れるのはなかなか簡単ではありません。妊婦さんならではの問題点があるのではないかと思います。耳鼻科医の視点から、花粉症を乗り切るためのアドバイスを送りたいたいと思います。

くしゃみによる、鼻かみに伴う腹圧の問題

妊娠中で、特に切迫流産、切迫早産、特に子宮頸管無力症の合併がある方にとっては、腹圧が加わる激しいくしゃみ発作は是非避けたいものです。また、次から次に流れ落ちる鼻水を、たとえ一時的であってもか取ってしまいたいと感じるのは当然です。強く鼻を噛まざるを得なくなります。

鼻詰まりの問題

妊婦妊娠してから、お鼻に関して感じる変化は、「妊娠してから鼻が詰まるようになった」ということではないでしょうか。特に寝てる時に鼻詰まりか強くなります。鼻水をかもうとしても、鼻から空気が出てこない。とても辛いです。妊娠中はエストロゲンという卵巣ホルモンの影響で血管が拡張傾向になります。さらに就寝中は自律神経が副交感神経優位となり、さらに血管が拡張傾向となります。実は、この血管拡張が鼻粘膜を腫らすことが鼻詰まりの大きな原因となります。

対策は?

花粉症対策の基本は、「吸い込む花粉をいかに減らすか」につきます。長年花粉症と闘っている方にとってはマスク、ゴーグルの着用。風の強い日に窓を開けない。洗濯物の外干しはしない。などの基本敵対処法は十分ご存知のはずです。それでも症状が出るのです。窓を閉め切って家の中でじっとしているわけにはいかないのです。お買い物に行ったり、お子さんのお迎えなど、どうしても人の手を借りれない状況がたくさんあ理、外出は避けられないと思います。ここでは一般的な対策はを前提にあるとした上で、少しでも楽に過ごせるような対策やお薬の治療をご説明します。

鼻うがい

これは効果的だと思います。注意点としては、人肌に温まった液で洗浄すること。少しずつ始めて、ある程度通りが良くなってきたら安心して洗浄して下さい。洗浄用の器具は注射器型でもボトル型でも構いません。違いは、注射器型は洗浄液を別容器に準備して、注射器で吸い上げては洗浄、吸い上げては洗浄を繰り返すこと。ボトル型はボトルに貯めた洗浄液を使うということです。注射器型の方が鼻腔への入射角度の自由度が高いと思います。洗浄液は生理食塩水です。0.9%の食塩水ですので、1L の水に対して食塩を9g溶かせばできます。洗浄剤を購入して、厳密に計量して使わなくても、家庭用の塩をぬるま湯に入れて、薄い塩味にして使えば十分です。冷たいと痛みを感じるので、ぬるいお風呂の温度くらいでいいと思います。飲み込んでしまっても胎児への影響はありません。血圧が高くて減塩食にされている方でもゴクゴク飲まなければ影響は軽微です。

ワセリン塗布

外出する時に鼻前庭部(男の人のヒゲが生えているところ、上唇と鼻の間の部分)にワセリンを塗ってみて下さい。マスクの下であっても有効です。ワセリンがなければ手近にある保湿クリームやリップクリームでも可能です。鼻に憂込まれる前にトラップしてくれます。帰宅後に洗い落として下さい。

蒸しタオル

これは鼻詰まりに有効です。入浴でも同じ効果が得られますが、鼻が詰まるたびにお湯を沸かすのは大変です。お絞りをレンチンして熱いおしぼりを作ります。暖かい水蒸気を鼻からしっかり吸い込んでください。お鼻が通るようになって下さい。上記の外出後のワセリン落としの際に利用されるのもいいと思います。

眼薬で目を洗う

アレルギー性結膜炎の点眼薬は胎児に影響を及ぼしません。また、目を洗うために人工涙の点眼薬を使うのも良いです。外出時のコンタクトレンの使用ははなるべく避け眼鏡を利用すると、アレルギー性結膜炎の発症を抑制できます。水道水で目を洗うことは推奨できません。眼薬を利用して下さい。

衣服の種類も注意

車でのお買い物でもフリースやウールは不可です。室内着からの着替えが大変ならその上からナイロン時の上着を羽織って下さい。帰着されたら入室前に脱いで上着をはたいて花粉を落として下さい。屋内に花粉を持ち込まないことに関しては、他のご家族にしっかり協力していただくことがとても大切です。新しい家族を迎えるために、家族全員で協力しましょう。

薬物療法

対策を実施しても症状が激しい場合、お薬の助けが必要になる場合も多いと思います。妊娠中、授乳中の治療を求めて受診される患者様も多くいらっしゃいます。

まずお薬に対する不安として真っ先に考えるのは「胎児に対する安全性」の問題だと思います。妊娠の維持に問題はないのか、催奇形性の問題は大丈夫なのか。ということだと思います。我々お薬を処方する人間も同じ気持ちです。副作用に関しては、患者さんの基礎疾患、合併症等も考慮して常に安全性を考えて処方をしています。これはお薬を開発し販売する製薬会社、それを認可する国も同じ気持ちだと思います。ですから薬の添付文書(取り扱い説明書のようなもの)には妊婦さんへの投薬、授乳婦さんへの投薬、さらに、小児や高齢者への投薬、基礎疾患のある方への投薬等が記されています。副作用に関しても当然記載があります。

妊婦さん、授乳婦さんへの投薬に関しては明らかに問題があるののは「投薬を避けて下さい」、「授乳を避けて下さい」と記載してあります。しかし「安全に服用できますよ」と記載してあるお薬はまずありません。皆一応に「治療上の有益性が妊婦、胎児、授乳に対する危険性を上回る場合、使って下さい」と記載されています。それでは医者はどのように妊婦さんへの処方をしているのかと言いますと。添付文書に書いてある情報だけでは何もできなくなるので、経験的な情報を元に判断せざるを得ません。しかし国内にはこのような情報を集積したものがありません。海外でのデータを参考にしながら慎重に処方することになります。現在、オーストラリアで公表されている蓄積データを参考にする場合が多いと思います。

初期治療

一般的に花粉症の薬物治療は花粉飛散開始1〜2週間前に開始するのが基本です。佐賀では例年2月上旬から飛散が始まりますので、1月末までには治療を開始すべきだと思います。しかし、妊婦さん、授乳婦さんに対しては配慮が必要です。

妊婦さんへの投薬の問題点

妊娠中の胎児への薬の影響は、「胎児の体の形成」のことと、「毒性つまり、臓器の働きへの影響」のことの2点だと思います。

妊娠4ヶ月までは服薬は避けたい

胎児の臓器の形成が完了するのが、概ね妊娠4ヶ月(12〜15週)くらいなので、そこまでは可能であれば飲み薬は避けたいところです。局所ステロイドの噴霧剤は全妊娠期間、授乳期間において安全だと思います。耳鼻咽喉科での鼻洗浄、ネブライザー治療も効果的だと思います。

妊娠5ヶ月以降は

推奨されているのは第1世代の抗ヒスタミン剤と局所ステロイドの噴霧剤で、第2世代の抗ヒスタミン剤としてはロラタジン、セチリジン、フェキソフェナジン、デスロラタジンです。

漢方薬は有効かつ安全か?

妊娠中、授乳中における漢方薬の服用が胎児、新生児に及ぼす¥大きなリスクの報告はないようです。医療分野では,EBM(Evidenced-based Medicine)を重視して治療の有用性を評価することが多いと思います。根拠を評価できるだけの十分な研究がなされているかどうかということです。漢方薬における抗ヒスタミン剤との比較試験が不十分のようです。小青竜湯、越脾加朮湯、大青竜湯方意、麻黄附子細辛湯などの有効性が報告されています。

舌下免疫療法

妊娠中も継続して構わない治療とされていますが、妊娠中に開始することは避けた方が良いと思います。

レーザー治療

妊娠5ヶ月以降であれば手術は可能ですが、通年性アレルギーを合併していない方なら、花粉飛散期の収束予想を考えて選択すべきだと思います。

授乳中の薬物療法

授乳中の服薬に関しては妊娠中と同様に添付文書には、原則的には「投与しないように」、「服用中は授乳を避けて」と書いてあります。「服用中は、搾乳して母乳を廃棄して人工乳を与えて下さい。」ということになります。当院では局所ステロイドの噴霧剤をメインにして、症状がきつい時だけ第一世代の抗ヒスタミン剤を短期間使用しています。ステロイドという名前に過剰に反応される方もおられますが、局所ステロイドの鼻腔内噴霧は鼻腔粘膜に対して局所的に作用が完結し、全身には影響を及ばさないので、胎児胎盤循環への移行、母乳への移行はありませんので安心して使用して良いと思いますし、効果も十分得られます。

おわりに

花粉症をお持ちの妊婦さん、授乳婦さんのご心配にお答えできればと思いこのブログを書きました。医師として妊婦さん、授乳婦さんの医療に対するコメントを書くことは大変責任が重く、今まで躊躇していましたが、実際治療を行っている立場上回避できない項目だと考えてお話しさせていただきました。妊婦さん、授乳婦さんのお気持ち、かかえておられる問題点んに十分お答え出来ていないかもしれませんが、何かのご参考なれば幸いです。

TEL 0952-24-8010 佐賀県佐賀市の嘉瀬町大字扇町2469ー26

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