佐賀県佐賀市のいちはら耳鼻咽喉科クリニックです。 新生児からご高齢の方まで、全ての年齢の患者様を対象にしています。1.的確な診断と治療 2.十分な説明 3.受診しやすい環境 4.子どもを怖がらせない を理念として診療にあたっています。アレルギー性鼻炎のレーザー治療、睡眠時無呼吸症候群の治療にも力を入れています。

「ゾレア 」〜重症スギ花粉症治療薬オマリズマブ〜

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「ゾレア 」〜重症スギ花粉症治療薬オマリズマブ〜

2019年12月、重症スギ花粉症に対して、新しい作用を持つ「ゾレア(一般名:オマリズマブ)」が使用できるようになりました。お値段が高く、注射のお薬であることを除けば、かなり効果的なお薬です。今シーズンだけはしっかり乗り越えたい受験生などにも良いのではないでしょうか。

ゾレア のご説明の前に、アレルギー反応について、簡単にご説明致します。

【アレルギーとは】

私たちの体には、体内に自分の体の成分と違う物質(アレルゲンと言います。細菌、ウイルス、食物、ダニ、花粉など色々あります)が侵入すると、これを異物として認識して、攻撃し排除する仕組みがあります。これを「免疫」と呼んでいます。アレルギー反応も免疫反応の一種です。

アレルギーの場合、通常は異物とみなされないようなもの(食品などもそうです)に対してまで反応し、さらに自分の体を傷つけてしまいます。

アレルギー反応を引きおこす役者は、たくさんいます。主な役者は、抗原提示細胞、リンパ球、好酸球、マスト細胞などの細胞と、IgE抗体、ケミカルメディエーターと呼ばれる化学物質(ヒスタミン、ロイコトリエン、インターロイキンなど)です。最終的にはこのケミカルメディエーターが体の組織を攻撃してくしゃみ、鼻水、鼻づまり、目のかゆみ、蕁麻疹等の諸症状を引き起こします。

すでにアレルギーの体質が完成している患者さんにおいては、マスト細胞、IgE抗体、ケミカルメディエーターが主要な役割を果たすので、アレルギーの治療では、これらの作用を抑制することが必要になります。

【アレルギー性鼻炎症状が現れるまで】

アレルギー性鼻炎を持っている患者さんが、原因となる物質(アレルゲン)を吸い込んでから症状が現れるまでの体内での反応を見てみます。

①体の中にアレルゲンが侵入します。

 

②それぞれのアレルゲンに特化した専用のIgE抗体(特異的抗体と呼びます)が動員されます。

 

③抗IgE抗体がマスト細胞の受容体に結合します。マスト細胞は気管支、鼻粘膜、皮膚など外界と接触する組織の粘膜や結合組織に存在する細胞で、す。

 

④侵入したアレルゲンと動員された特異的IgE抗体が合体します(抗原抗体複合体と呼びます)

 

⑤マスト細胞は抗原抗体複合体の受容体への合体により、異物侵入を認識して、ケミカルメディエーターを放出します。

 

⑥ケミカルメディエーターが体の諸臓器に刺激して、アレルギー症状が現れます。

全体を見ると以下のような経過になります。

アレルギー治療は、これらの反応をどこかで断ち切って、症状が出ないようにすることを目的としています。

 

【アレルギーの治療】

上記の①~⑥に対する反応に対する、アレルギーの治療に関してご説明します。

①、②に対する治療:アレルゲンが何なのかを確かめ、それを体内に侵入させないために生活環境から排除するすることです。

環境を整備して、生活するエリアからアレルゲンを減らす対策を行ったり、マスクやゴーグルで体内への侵入を防ぎます。

③に対する治療:以前はここに作用する治療方法はありませんでしたが、新たな治療薬としてオマリズマブというお薬です。生物学的製剤の一種で、「ゾレア」という製品名で2019年12月からスギ花粉症に使用可能になりました。

 

④に対する治療:舌下免疫療法(別項で解説しています)があります。

⑤に対する治療:現れた症状を抑える治療として、現在、一般的に行われている、抗アレルギー剤、ステロイド点鼻液、場合によってはエピネフリン(エピペン)という製剤を使用します。

 

現時点での重症スギ花粉症に対する理想的治療は「ゾレア 」+「従来の治療薬」+「舌下免疫療法」ということになります。

「今シーズンだけお願い!」と言われると「ゾレア 」という答えになると思います。

 

ゾレアによるアレルギー治療

 

「ゾレア 」の治療を受けるには

治療の対象かどうかの判定

全ての「スギ花粉症」の患者さんが「ゾレア 」治療の対象となるわけではありません。条件としては

重症以上の「スギ花粉症」であること。

②12歳以上であること。

③体重が20~150Kgであること。

④アレルギーに関する血液検査が一定の数値以上であること。

⑤従来の抗アレルギー剤の治療で、十分な効果が得られなかったこと。

が挙げられます。

上記の条件が、客観的に証明されなければ使用できないことになっています。

そのため、

 #使用開始前に通常のアレルギー治療薬を飲んでいただき効果判定を行う。

 #その前後に血液検査を行う。

ことなどが義務付けられています。

投与量の決定

「ゾレア 」はIgE抗体とマスト細胞の受容体とが合体する行程を邪魔して、マスト細胞にアレルゲンの侵入を認識させないように作用します(抗IgE抗体と呼ばれています)。

ただ、「ゾレア 」が作用する抗体は、「スギ花粉特異的抗体」のみではなく、あらゆる抗体(「非特異的抗体」と呼びます)に対して作用しようとします。スギ花粉以外にもダニ、ねこ、食品など様々な物質に対するIgE抗体が体の中に存在する可能性があります。

スギ花粉症の特異的IgE抗体を邪魔するにはどれだけの「ゾレア 」が必要なのかを知らなくては必要な量を決めることができません。

そのため、

  1. 治療を受ける患者さんの体にどれだけの抗体があるのか?
  2. スギ花粉に対する特異的抗体がどれだけあるのか?

を調べた上で、治療に必要な薬の量を決めなくてはいけません。

①を調べるために非特異的抗体の測定(採血による検査)

②を調べるために「スギ花粉特異的抗体」の測定(採血による検査)

が必要です。

 

使用開始までの一般的なスケジュール

前に書いた条件を満たすかどうかの判定が必要であること、血液の検査の実施が必要であることから、治療のご希望があっても「すぐさま開始」というわけにはいかないのが実情です。

一般的な流れは以下の図のようになります。

 

ゾレア の価格の問題

また、生物学的製剤と言って、生産過程が複雑で、従来のお薬のように大量生産ができないため、価格が高くなっています

「ゾレア 」は注射のお薬で、1回に2~4ヶ所に皮下注射を2~4週間ごとに、花粉飛散シーズン中行います。

「ゾレア 」は単独では使用せず、従来のアレルギー治療薬と合わせて使用することになっていますので、服薬が不要になるわけではありません。そうは言っても重症花粉症の方にとっては、良い治療と思います。

「ゾレア 」の副作用について

注意すべき副作用としては、発生頻度は少ないようですが、以下の項目が挙げられています。

腫脹 、 紅斑 、 浮腫 、 鼻咽頭炎 、 血小板数減少 、 頭痛 、 傾眠 、 めまい 、 潮紅 、 消化不良

「ゾレア 」のこれから

現時点で「ゾレア 」はスギ花粉症限定の治療薬ですが、理論的にはその他のアレルギーにも応用が可能なはずです。「鼻茸をともなう副鼻腔炎」が新たな適応となっています。また、自宅でご自身での注射が承認されている国もあるようです。

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